相続の基礎知識

Vol.6

孫に財産を残す方法まとめ

  • 孫に財産を残す方法まとめ

    遺産相続に限らず「孫に自分の財産を残したい」と考えるおじいちゃんやおばあちゃんは多い筈です。孫に財産をあげたい場合、ご自身の死亡後に財産をあげる場合と、生前(生きている間)に財産をあげる場合があります。今回は、孫に財産を残したい、与えたい場合に生前にやっておいた方が良い事、知っていた方が良い事を主題に考えてみましょう。

    目次

    1.生前贈与

    生前贈与

    生きているうちに財産を渡しておくという方法です。これは孫に限りません。生きている間に遺産をあげてしまう、つまり孫に「贈与する」ということです。年間110万円までは贈与税がかかりませんので、税金対策として有効な手段です。

    2.遺産相続による方法

    遺産相続による方法

    まずは、今までのコラムで勉強をしてきたことを復習しましょう。民法で定められた相続の順位について図にするとこのようになります。

    被相続人との関係 相続の順位
    配偶者 常に相続人になる(民法890条)
    第1順位(民法887条)
    直系尊属 第2順位(民法889条)
    兄弟姉妹 第3順位(民法889条)
    • 配偶者がある場合に被相続人に子がいれば被相続人の配偶者と第1順位である子またはその代襲相続人(孫・ひ孫)が相続人となります。
    • 子もその代襲相続人である孫・ひ孫もいない場合は、被相続人の配偶者と第2順位である直系尊属(父母・祖父母)が相続人となります。
    • 子も直系尊属もいない場合は、被相続人の配偶者と第3順位である兄弟姉妹またはその代襲相続人(甥・姪)が相続人になります。

    つまり、孫が遺産を相続できるかどうかは、孫の置かれている状況によるわけです。


    相続の関係図

    被相続人の配偶者は常に相続人

    被相続人に配偶者がいる場合は、配偶者と、「順位の高い相続人」で財産を分ける ことになります。
    ※要件として戸籍上、入籍していること(内縁の妻や離婚した前の妻は不可)。

    配偶者以外の相続人の順位

    ■第1順位・・被相続人の子供

    被相続人の子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となる。子供も孫もいる場合、子供が相続。子供がすでに死亡しており、孫がいる場合、孫が相続。(代襲相続という)

    代襲相続とは・・・もし子供(※被相続人の子ども、この場合孫の親)が親(被相続人)より先に亡くなっていた場合に、孫が子供の代わりに相続人となることができる。

    ■第2順位・・第1順位の人がいないとき

    被相続人の直系尊属(父母や祖父母など)が第2順位の相続人となる。第1順位の方がいる場合は、第2順位の方は相続できない。父母も祖父母もいる場合は、死亡した人により近い世代である父母の方を優先となる。

    ■第3順位・・第1順位の人も第2順位の人もいないとき

    被相続人の兄弟姉妹が第3順位の相続人となる。
    第1順位、第2順位の方がいる場合には、第3順位の方は相続できない。その兄弟姉妹が既に死亡している場合、その人の子供(甥っ子、姪っ子)が相続人となる。(この場合も「代襲相続」という)

    ※第3順位の代襲(下の世代に引き継ぐこと)の場合、甥っ子、姪っ子に子供がいた場合は代襲されない事に注意。


    孫が法律上で相続分を認められる場合は、孫の親である子供(被相続人の子)が相続時点で亡くなっている場合に限られるということを重ねて申し上げておきます。つまり、子供というのは法律で第1順位の相続人ですので、子供が生存している場合、孫はいきなり相続人となることはできません。

    ※相続放棄について
    子供が相続放棄をした場合、孫が代わりの立場になるのではと考えがちですが、とても注意しなければならないいけないことがあります。もし子供が相続放棄をしていた場合、孫は相続人となることはできません。 相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされるからです。また代襲相続は、子供の「死亡、欠格、排除」に限られており、子供が相続放棄をした場合、代襲相続は発生しない旨法律で定められています。兄弟間の仲が良く、親切心で相続放棄をしても、よく法律内容を理解した上で行わないと後々後悔する羽目になります。

    3.子供が生きているのに孫に相続させる方法はあるのか?

    子供が生きているのに孫に相続させる方法はあるのか?

    子供が生きているうちに孫が相続することは基本的にはできません。では子供(被相続人の子、孫の親)が生きているのに、孫に相続させる方法はあるのでしょうか…?それはズバリ、次の3つの方法です。

    1. 代襲相続
    2. 遺言書に「孫に相続させる旨」記載する
    3. 孫と養子縁組をして、孫を子供にする

    1.代襲相続

    孫は直接的には相続人とはなれません。相続人である被相続人の子が、被相続人よりも先に亡くなっていた場合、孫が代わりに相続する事を「代襲相続」といいます。

    例)代襲相続で相続した時の孫の相続分
    • 被相続人の財産:2400万円
    • 子(A、B):2名 ※子Aはすでに死亡
    • 孫(C、D):2名 (Aの子)

    上記設定での各相続人の法定相続分は・・・

    子B:2400万円×1/2=1200万円
    孫C:2400万円×1/2×1/2=600万円
    孫D:2400万円×1/2×1/2=600万円

    子Aが子Bと同じように受け取る予定であった相続分をAの子供2名が分け合う形となります。


    2.遺言書に「孫に相続させる旨」記載する

    最も簡単で確実性が高い方法は、遺言書で「孫にも遺産の●●を渡す」と記すことです。相続の順番や、あらかじめ規定されている法定相続分も基本的には無視して指定できますので遺言書はご自身の希望通りに遺産を相続させる事ができる可能性があります。 従って、特定の孫に遺産相続をする事や希望する財産を希望する割合で遺産相続させる事ができる可能性があるため、孫に遺産相続を希望する場合には一番お勧めです。

    ※遺言書で相続した時の孫の相続分

    遺言者は被相続人が自由に遺産の分配を決めることができますので、残す財産の割合は被相続人の自由です。しかし、一定の相続人には『遺留分』(最低限の遺産を受け取れる割合)が決まっています。この遺留分を無視した遺産分配を行おうとすると他の相続人との間に亀裂が入りトラブルに発展する可能性があります。

    ※遺留分の割合

    • 配偶者や子の遺留分は相続財産の1/2
    • 親の遺留分は1/3
    • 兄弟姉妹の遺留分は0

    3.養子縁組で相続する

    もうひとつの方法として、孫を養子にするという方法があります。お孫さんを養子縁組にて養子にする事で「孫」ではなく、第一順位の「子供」とみなされます。従って直接に遺産相続をさせる事ができるわけです。この方法を利用すれば、確実に遺産を相続させることができ、かつ、特定の孫だけを養子縁組しておけば、特定の孫のみに遺産相続させることが可能です。
    また、この方法を仮にとった場合、相続人が増えることによって相続税対策にも繋がる可能性があります。但し、被相続人に実の子供がいる場合、養子にできるのは一人までです。

    今までの場合も同じですが、実行するためには、仲の良かった家族観にトラブルを起こさないように、親族間でよくご相談する必要がありますことは言うまでもありません。

    ※養子縁組で相続した時の孫の相続分

    養子縁組を行うと孫は相続人となり、被相続人との関係は親と子になります。従って、被相続人も、子も、孫も、今までの立場が変わる事になります。極端な話、親子が兄弟になる訳です。

    例)

    • 被相続人の財産:2400万円
    • 配偶者:1名
    • 子A:1名
    • 孫B(養子):1名

    上記設定での各相続人の法定相続分は・・・

    配偶者:2400万円×1/2=1200万円
    子 A:2400万円×1/2×1/2=600万円
    孫 B:2400万円×1/2×1/2=600万円


    【補足】遺産分割協議の中で主張してもらう

    どのような場合にそうなるのかまだ経験がありませんが、遺産分割協議の中で、孫に遺産を渡しても良いものか、相続人全員に聞いてみて、全員の許可が取れれば孫に遺産を渡すことも可能のようです。ただこの場合は、被相続人はすでに他界している状況ですから、生前に自分の考えをきちっと代弁してくれる信用のおける人に頼んでおく必要があります。やはり、遺言書で指定しておく事の方が確実です。

    4.孫に財産を残す方法まとめ

    孫に財産を残す方法まとめ

    人は、色々な人生模様の中で、色々な感情を生前持ちます。特に自分が築いてきた財産に関して、自分の好きなようにしたいと思うのは当たり前かもしれません。また、ご自分のお孫さんに関して言えば、格別な思いがあるでしょう。でもそこで自分の死後、そのお孫さんにとって「一番大事なのは何か」をよくお考えになって事を進められるのが良いでしょう。生前に、関係される方々と良くお話をして、自らが死ぬ前に、相続予定人皆さんの合意が取れているに越したことはありません。

    もし今回のようなテーマがおありでしたら、専門知識のない部分も含め、弁護士などの経験のある専門家に、一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。