相続の基礎知識

Vol.7

嫡出子・非嫡出子に関する知識まとめ

  • 1.嫡出子と非嫡出子(ひちゃくしゅつし)の違い

    嫡出子と非嫡出子(ひちゃくしゅつし)の違い

    嫡出子と非嫡出子(ひちゃくしゅつし)の違いを説明する前に、まずは「結婚」と「婚姻」についての概念を確認しましょう。

    「結婚」と「婚姻」の概念を理解しよう。

    広辞苑では「婚姻」の定義として、「結婚すること」とした上で、「夫婦間の継続的な性的結合を基礎とした社会的経済的結合で、その間に生まれた子が摘出子として認められる関係」としているようです。ウィキペディアには、学術的には「結婚」は配偶関係の締結を指し、「婚姻」は配偶関係の締結のほか配偶関係の状態をも含めた概念として用いられている。法概念としても「結婚」ではなく「婚姻」のほうが用いられている。日本の民法上でも「婚姻」と表現されており(民法731条)、講学上においても法概念としては「婚姻」が用いられる。と記されています。

    「嫡出子」とは?

    かなり難しいですが、我々にとって「嫡出子」「非嫡出子」は、あまり聞かない言葉です。非嫡出子(ひちゃくしゅつし)は、昭和17年民法改正前までは、「非嫡出子」といわず、認知されているか否かで「私生子」、「庶子」と分類されていました。婚姻外の子供で、父親に認知されない子供を「私生子」といい、認知された子は「庶子」と民法上分類されていました。しかし、差別の原因になったため、「非嫡出子」に統一されたのです。
    つまり「嫡出子」とは、法律上の婚姻関係にある夫、妻の間で生まれた子どものことを指します。

    ※嫡出子の条件

    婚姻中に妊娠した子ども
    婚姻後201日目以後に生まれた子ども
    父親の死亡後300日以内に生まれた子ども
    離婚後300日以内に生まれた子ども
    未婚時に生まれて認知をされ、その後に父母が婚姻した子ども
    未婚時に生まれてから、父母が婚姻し、父親が認知をした子ども
    養子縁組の子ども

    「非嫡出子」とは?

    非嫡出子とは、法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれた子どものことをいいます。ただし、下記の民法第七百七十九条において、非嫡出子(嫡出でない子)は、その父または母が認知することができるように定められており、認知されていれば相続権も取得できます。

    民法第七百七十九条(認知)
    嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。

    非嫡出子が嫡出子の身分を取得するケース

    民法第七百八十九条(準正)
    • 父が認知した子は、その父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得する。
    • 婚姻中父母が認知した子は、その認知の時から、嫡出子の身分を取得する。
    • 前二項の規定は、子が既に死亡していた場合について準用する。

    準正とは、非嫡出子が嫡出子の身分を取得することをいい、たとえば、出生時に非嫡出子であっても、その後父母が婚姻すると準正により嫡出子の身分を取得します。

    2.「推定される嫡出子」と「推定されない嫡出子」?

    「推定される嫡出子」と「推定されない嫡出子」?

    つづいて、嫡出子は「推定される嫡出子」と「推定されない嫡出子」に分類できます。

    推定される嫡出子とは?

    民法第七百七十二条(嫡出の推定)
    • 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
    • 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

    推定という言葉が使われていますので、必ずしも夫の子供であるとは限らないということです。ということは、夫は、子供が嫡出であることを否認することもできるのです。

    民法第七百七十四条(嫡出の否認)
    第七百七十二条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる。

    ただし、勝手に否認できるのではなく、子供または親権を行う母に対する嫡出否認の訴え、つまり裁判上の訴えによって行うことができるのです。

    民法第七百七十五条(嫡出否認の訴え)
    前条の規定による否認権は、子又は親権を行う母に対する嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。

    また、嫡出否認の訴えは、夫が子供の出生を知った時から一年以内に提起しなければなりません。

    民法第七百七十七条(嫡出否認の訴えの出訴期間)
    嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない。

    なお、親子の関係は、父子関係だけではありません。母子関係にもあります。
    母子関係の証明は、懐胎(妊娠)という事実によって確定されます。 

    嫡出否認の訴えの出訴期間

    婚姻の解消又は取消し後300日以内に生まれた子の出生の届出の取扱いは、平成19年5月21日から変更になっていますので注意が必要です。原則として、離婚から300日以内に生まれた子は、前夫の子として扱われることとなっていますが、平成19年5月21日からは、婚姻の解消又は取消し後300日以内に生まれた子の出生の届出の取扱いが変更されております。
    平成19年同年5月7日付の法務省民事局長通達によると

    「懐胎時期に関する証明書」が添付された出生の届出の取扱いについて

    A.届出の受理について

    婚姻の解消又は取消し後300日以内に生まれた子については、「懐胎時期に関する証明書」が添付され、当該証明書の記載から、推定される懐胎の時期の最も早い日が婚姻の解消又は取消しの日より後の日である場合に限り、婚姻の解消又は取消し後に懐胎したと認められ、民法第772条の推定が及ばないものとして、母の嫡出でない子又は後婚の夫を父とする嫡出子出生届出が可能。これは、離婚後の妊娠に限り300日以内でも前夫以外を親とする出生届が可能だということを意味します。

    B.戸籍の記載について

    1. Aの届出が受理されると、子の身分事項欄には出生事項とともに「民法第772条の推定が及ばない」旨が記載さる。
    2. 但し、「懐胎時期に関する証明書」が添付されていない出生の届出の取扱いに関しては、従前のとおり、民法第772条の推定が及ぶものとして取り扱われる。
      (前婚の夫を父とする嫡出子出生届でなければ受理されない)

    C.取扱いの開始について

    1. この取扱いは,平成19年5月21日以後に出生の届出がされたものについて実施される。
    2. 既に婚姻の解消又は取消し時の夫の子として記載されている戸籍の訂正については、従前どおり、裁判所の手続が必要。
    ※「懐胎時期に関する証明書」とは
    出生した子及びその母を特定する事項のほか,推定される懐胎の時期及びその時期を算出した根拠について診断を行った医師が記載した書面。

    推定されない嫡出子とは

    民法第七百七十二条(嫡出の推定)
    • 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
    • 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

    民法第七百七十二条にありますとおり、近頃多くなった「できちゃった婚」のような、婚姻の成立の日(婚姻の届出の日)から200日以内に生まれた子供は、「推定される嫡出子」となれません。嫡出子ではあるけれども、夫の子供であるとの推定をされないということです。この場合、夫が自分の子供でないと思った場合、厳格な要件が必要な「嫡出否認の訴え」が必要ないということになります。

    夫は親子関係不存在確認の訴えをすればよいこととなります。しかも嫡出否認の訴えの場合は、「嫡出否認の訴え」のように「夫という限定された人」が、かつ「子供の出生を知った時から一年以内に嫡出否認の訴えを行わなければならない」という限定された期間がありません。

    つまり、いつでも、誰からでも、訴えられる可能性があるということになります。「推定されない嫡出子」は、相続争いがあった場合、非常に不利な立場となるケースが多いです。

    3.非嫡出子の相続分は嫡出子と同じ

    非嫡出子の相続分は嫡出子と同じ

    以前のコラムでもお話しました通り、相続が発生した際に、誰が法定相続人になるかは法律上決められています。

    配偶者は必ず相続人

    「子」 第1順位
    「直系尊属」 第2順位
    「兄弟姉妹」 第3順位

    ところが、最近まで子であるはずの「非嫡出子」の相続割合は「嫡出子」の2分の1とされていました。しかし、同じ母親から生まれたにも関わらず、不公平が生じている事実に法の下の平等に反するのではないかという指摘は以前からなされていました。

    平成25年9月4日の最高裁判所の判決において、今までの法律が「非嫡出子」に対して不公平であり、違憲であるという判断が下され、今では嫡出子も非嫡出子も同じ相続分が可能になりました。

    民法第九百条(法定相続分)

    同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

    • 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
    • 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
    • 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
    • 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

    上記の下線部分「ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、」が削除されたのです。


    非嫡出子の相続分が改正後の相続分にならないケース

    平成13年7月1日(最高裁判所決定の事案における相続開始日)から平成25年9月4日(決定日)の期間中に相続開始をした場合であれば、「非嫡出子」であっても「嫡出子」と同じ法定相続の割合になりますが、

    • 遺産分割協議で審判が確定している場合
    • 協議が成立している場合

    は、「非嫡出子」の相続の割合は「嫡出子」の2分の1のままになります。

    4.非嫡出子がいる場合の相続争いを回避するポイント

    非嫡出子がいる場合の相続争いを回避するポイント

    何はともあれ弁護士に相談!

    まずは争いが起きてしまう前に、多くの事例を経験している相続専門の弁護士に相談することをにお奨めします。

    非嫡出子(婚外子)という立場に自分がなっている場合を考えれば、生まれが自分のせいではないと逆に憤慨するでしょう。相続人であれば非嫡出子にも遺産をもらう権利がある訳ですから。でも嫡出子の立場からすれば、非嫡出子にも相続分を分け与えることはいやなのかもしれません。こういった事を避けるために、何ができるのかです。

    主には、認知をしておく事で「非嫡出子」として相続人となり得ます。また被相続人が亡くなる前に「遺言書」を書き残してもらうのが一つの方法です。遺産の分割の方法を指定していれば、余計な話し合いをする必要はなくなります。

    最も重要なのは、被相続人が生きている間に話し合いをして、誰が法定相続人なのか、遺産は、どんなものが、どれだけ残っているのかを明確にすることで、「非嫡出子」の急な出現による混乱を回避出来、被相続人が生きていれば前向きな協議が出来ます。