相続の基礎知識
Vol.5
遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ)についての基礎知識と選任の仕方、手続き、解約時の注意点などを解説していきます。まずは遺言執行者に関する主だった民法をざっと確認しておきましょう。
では、遺言執行者およびその業務について具体的に考えてみましょう。基本的に遺言執行者とは、遺言の内容を、法律に則り、正確に実現させるために「必要な手続きなどを行う人」の事を言います。遺言執行者は各相続人の代表として被相続人が亡くなった後に、
などの遺言の執行に必要なすべての行為を行う権限を持ちます。
相続人でも出来る場合と遺言執行者の指定がある場合
基本的に「遺贈」「遺産分割方法の指定」「寄付行為」に関しては相続人でもできます。しかし、遺言執行者の指定がある場合は遺言執行者が執行することになります。
※遺言で遺言執行者を指定する場合、遺言執行者が相続開始後の手続きを単独で行う権限がある事で以下のメリットが生まれます。
相続というのは一生に何度もあるものではないので、一般的には初めての事がほとんどです。遺言執行者執行者は相続人代表として手続を進められるので、煩雑になりがちな「作成する書類の収集」や「署名押印手続」など、遺言執行者を指定していることで、手間暇の削減、時間短縮にもなります。
遺言執行者でなければ出来ないこと
この様な場合には、遺言執行者のみが執行出来ることになっているため、必ず遺言執行者が必要になりますので覚えておきましょう。では、遺言執行者になれる者はどんな人なのでしょう。
基本的に成人した者なら誰でもなる事ができます。執行の内容によって、銀行・弁護士・司法書士などを選任する事も可能です。被相続人の残す遺言には、内容によっては相続割合の指定や遺産分割そのものを禁止にしている場合もありますが、基本的には遺言を正確に執行していく必要のあるものがほとんどです。また、遺産相続におけるトラブル防止のためには必要不可欠な役と言って良いでしょう。
では、遺言執行者として選任された人は、具体的にどのような事をしていけばいいのか考えてみましょう。遺言執行者になった場合、一般的に以下から始めます。
なお、これらの書類を『遺言書の写し』とあわせて全ての相続人へ交付します。難しいと感じた場合は、弁護士や司法書士に相談してみると良いでしょう。
遺言執行者になれる人・遺言執行者になれない人
基本的に誰でも遺言執行者になれますが、未成年者と破産者となっている相続人は遺言執行者になれません。(民法1009条:遺言執行者の欠格事由)しかし、誰でも遺言執行者になれるからといって、適当に決めてしまうのではなく、まずは「専門家」「弁護士」「税理士」「司法書士」「行政書士」に依頼した方が無難といえるでしょう。
■遺言執行者がそもそも必要ない場合とは?
遺言でできる範囲内で完了する場合、遺言がない場合は、遺言執行者を選任する必要が無いため不要です。
■必要ではあるが遺言執行者が必須ではない場合とは?
この2つを行う予定がない場合は遺言執行者の選任は必須ではありません。しかし、遺言の内容を公平かつ確実に実行してくれる遺言執行者を指定しておけば、のちのトラブルを回避する事が出きますので、選任しておくことをお奨めします。
では、誰に遺言執行者をお願いすればよいのでしょうか。今までの中で述べました通り、遺言執行者は「未成年」「破産者」以外であればどんな人でもなることができます(民法第1009条)。
ここで考えなければならないのは、遺言執行者は利害関係に関わるということです。遺産相続の手続きをスムーズに行うためには、遺産相続における利害関係者ではない事が望ましいです。また相続に関する法律知識が必要になります。例えば、弁護士、司法書士、信託銀行などの専門家であることが望ましいでしょう。
色々な事情でそれでも相続人の中から選びたいという事であれば、実際に財産を相続する相続人が遺言執行者となるのが良いのではないでしょうか。
方法は以下の3つです。
1.遺言書で遺言執行者を指定する
基本的には、事前に遺言執行者にしたい方へ、許可をもらって遺言書で「●●を遺言執行者に指定します」といった記載を遺言書に残す方法です。
2.第三者に遺言執行者を決めてもらう
遺言で、遺言執行者を「決めてくれる方を指定する」方法です。そして、その遺言執行者の選任を任された方が、別の誰かを遺言執行者として指定する方法です。
3.家庭裁判所に遺言執行者を決めてもらう
民法1010条にあるように、遺言執行者がない場合や亡くなった場合に、家庭裁判所は利害関係人の請求によってこれを選任することができます。
※遺言執行者がない場合とは、指定または指定の委託がない、指定された者が就職を拒絶した場合などを指します。
※遺言執行者が亡くなった場合とは、遺言執行者が死亡、解任、辞任、資格喪失などの事由が生じた場合に該当します。通常、家庭裁判所への申立書に、遺言執行者の候補者を記載しておきます。
申立人:相続人、遺言者の債権者、遺贈を受けたものなどの利害関係人が該当します。
申し立て先:遺言者が最後にいた住所地の家庭裁判所になります。
※遺言執行者に指定された者は承諾することも拒絶することも自由です。但し承諾したときは直ちに任務を行わなければなりません。
■遺言執行者に選任された人が職務怠慢の場合
民法第1019条にあるように、利害関係にある相続人などが、遺言執行者が「遺言執行の役割を満たしていない」と思った場合、その遺言執行者を解任することができます。
例えば…
■遺言執行者が解任される場合
1.遺言執行者が任務を怠った場合
「遺言執行者に選任された人が職務怠慢の場合」と同じ内容になります。
2.解任について正当な事由がある場合とは?
相続人や受遺者と遺言執行者で対立してしまい、遺言執行者と相続人らとの間で遺言の解釈をめぐって争いがある場合などを除いた、遺言執行者に適切な執行を期待できない場合が該当します。感情的な対立だけではなく、「遺言執行者が特定の相続人の利益増を図ろうとした」「公正な遺言の執行が期待できない事情がある」場合は、解任事由に当たります。
解任の手続きは、利害関係人が家庭裁判所に対して遺言執行者の解任を請求し、家庭裁判所において解任の審判を行った場合に解任の手続きが始まります。解任が確定した場合、遺言執行者はその地位を失うことになります。基本的に解任の申立ては選任の場合と同じになります。
遺言執行者が必要な場合、もしくは遺言執行者を指定して相続管理を行った方が良い場合、まずは「弁護士」「司法書士」「信託銀行」などの専門家に依頼することが一番安心かつ安全な対応といえます。まずは専門家に相談することから始めましょう。